臨月まで

臨月まではトラブルがほとんどない妊婦生活であった。初期はともかく眠く、立ちくらみが頻繁にあったが、たまたま負荷の軽い部門を回っていたため助かった。配慮してもらっていたこともあり一度も休んだり早退したりはせずにすんだ。いわゆる食べづわりであったため、夕方になると生唾がわき、妙に干し梅が魅力的に感じることはあったが、過食は頑張ってこらえたため体重管理も良好であっった。とはいえ、どうしても2時間連続程度の立ち仕事が避けられない職場環境であったので、立ちくらみが起きてしまい休ませてもらったことは何度かあったけれど、不具合はその程度であった。

幸いなことも妊娠線もできなかった。腹筋が強いためか、臨月近くまで腹部のふくらみが目立たず、急激にお腹の皮膚が伸ばされなかったことがあるかもしれない。その代わり妊娠後期は腹筋が内圧と戦っている感がすごかった。

マタニティウェアも9ヶ月ぐらいまではほとんど使わずに済んだ。臀部から下はほとんどサイズが変わらないため、丈の長い伸縮性のあるトップスをえらべば、チャックを開けてベルトを緩めればどうにかなった。ただし臨月に関しては、さすがに楽なものをはきたくなり、職場に行く必要もないのでマタニティワンピースを好んで着ていた。ショーツに関しても、もともと伸縮性が高く肌触りのいいものを好んではいていたこともあり、結局一枚も専用のものは買わずに済んだ。わたしは背が高い方なので体型の変化も少なかったけれど、もっと背の低い人なら早い時点で専用の衣料品が必要になるかもしれない。何が必要になるかは個人差が大きいので、前もってセットで買うのではなく、必要に感じた時点で購入するのが無駄がなくてよいように思う。

超音波でも、毎回内臓や手足や羊水量のチェックをしてもらったけれど、やや頭が大きいと言われたぐらいで、特に異常の指摘はなく過ぎた。体重についても、増えすぎとか減りすぎとか言われずに済んだ。(一度目がシュッとしていると検診で言われたことがあり、どういう意味だろうと気にかかってはいたのだが、産まれてみたら割と目力のある子だったのでこういうことかなと腑に落ちた。)

最初は妊娠の実感がないこともあり、流産していないかと神経質になっていたけれど、安定期に入るころには、検診の間隔はしかられない程度に延ばすようになった。胎動に変化がなく、血圧や体重に大きな変動がないようならたぶん大丈夫だろううということにした(10カウント法は面倒くさい割に数値が安定せずかえって不安になりそうなので実施しなかった)

仕事に早期に復帰するため産後の肥立ちをよくしたかったのと、そもそも出産時の人格が変わると言われる痛みが恐ろしかったので、無痛分娩を選択することにした。無痛分娩では、硬膜外麻酔をかけるという、自然分娩にない医療行為が行われるため、硬膜外麻酔による有害事象という自然分娩にはないリスクがあるというのは事実だが、妊婦の血圧が上がりにくかったり、胎児に過剰な圧がかかりにくいため胎児のストレスが少なくて済むというメリットもある。それに、緊急で帝王切開に移行する場合もスムーズにできる。そもそも統計的に妊産婦死亡率が高いわけではなく、事故が起きているのは小規模な診療所が主体なので、十分にスタッフがいる病院であれば自然分娩に比べてリスクが高まるわけではないだろう。

産院は無痛分娩の試行回数が多く、麻酔科医が麻酔を担当しているところを選んだ。やなり医療行為に関しては件数は重要だし、麻酔に関する有害事象への対応については産婦人科医より麻酔科医のほうが信頼できるだろう。