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NSTで最初の数十分程度胎児の動きがみられず、基線細変動も小さかったので寝ているだけだろうと思いつつも気になる。時間が経つと一過性頻脈もみられるようになってきたけれど。最近、動いている時間が短くなってきたような気もするし、やはり今日うまくいかなかったら帝王切開して出した方がいいのだろうか。

本日担当の医師がきて、今後の方針について説明される。もともと一日目で分娩に至る可能性が80%であったと。二日目で経膣分娩できなければ、今後経膣分娩できる可能性は日を追うごとに小さくなってくるが、トライすることはできると。明日以降どうするかは今日の結果をみて考えてもらっていいと。 子宮口はあまり開いていなかったが、ミニメトロは抜くことができた。開いてはいないものの柔らかくはなっているそう。前日の促進剤の効果はあったのだろうと言われた。

その後進行を促すため人工破水を施行した。ミニメトロと違ってほとんど痛みは感じない。産褥パッドをあてているせいもあるだろうが、勢いよく羊水が出てくる感じもない。

オキシトシン投与開始。助産師さんがお産を進めるため、足湯をしてくれた。冷えはやはりよくないのだそう。子宮の血流が減れば薬剤も効かなくなるだろう。 1時間ぐらいして、生理痛のような周期的な腰の痛みが出てくる。そこそこ痛い。陣痛のカウントのアプリで計ってみると、周期は3分を切っている様子。 昼になり、ベッドに横になって内診を受ける。子宮口が4cm開大していると。頸管は柔らかくなっていたが、今まで陣痛の強さが足りなかったのだとの説明を受ける。経膣分娩でいけるだろう、早くて今日、長引けば明日になるとの説明を受け、帝王切開は避けられそうだと安堵する。夫にそのことを伝えると、かかりつけの医院で薬の処方せんをもらってからできるだけ早くくるとのこと。

午後1時頃から陣痛が強くなり、陣痛でないときのほうが短くなってくる。陣痛がないときも腰痛は続いている。脂汗をかく感じの痛みでかなりつらい。助産師さんにいつから麻酔をかけるのか聞くと、通常はあと一時間ぐらいかけて5,6cm開くまで待ってからだが、せっかくプラスアルファの金額を払っているのだから希望があるなら早く麻酔をかけてもいいのではと言われる。できるだけ待ってみようかと考えるが、つらい。自然分娩はしたことがないが、痛みの質が違うのではないかと考える。なんか、こう、叫びたくなる質の痛みではない。丸くなって脂汗をかきたい感じである。体を動かすとすぐモニタがずれて反応しなくなるので、体を思うように動かせないのもつらい。助産師さんが来て、余計な力を入れるとお産が進みにくくなるので眉間にしわを寄せないようにいわれ、従うけれどやはりつらい。 何分時間が経っただろうと時計を確認すると、まだ3分しか経っていなかったりする。しかしここで耐えた方が後でスムーズに進むのなら、耐えた方がよいだろう。

これをあと何回繰り返せばいいだろうと考えていたところに、医師が来た。まだ4cmだが血圧が高いので麻酔しましょうといわれ、頷く。正直助かった。モニタの血圧を確かめると収縮期血圧が167mmHg。たぶん、ふだんは至適血圧の人間としてはかなり高いのだろう。 患者側になってみると、痛いとかいう主観的な理由でナースコールを押したり、麻酔を入れるように頼んだりするのは、いやな顔をされないとわかっていても結構やりにくいということを学んだ。無痛分娩だから夫の助けは大していらないだろうと思っていたし、順調に進んでいる分には一人で大丈夫なのだが、スタッフが常時ついてくれるわけではないことを考えると、急変時などに備えてやはりいてもらった方がいい。 麻酔科の医師が来て、左側臥位をとるように言われる。陣痛の間欠期を狙って姿勢をとる。硬膜外麻酔はどの程度痛いのだろうと思っていたが、背中で何かをされているらしいレベルで終わる。所用時間にして5~10分程度か。すごいうまい。麻酔を入れると、ほどなく整理痛様の腰痛は消失し、肛門の圧迫感とひどく尻餅をついたような座骨の痛みが目立ってくる。残った痛みは耐えられないほどではない。子宮の収縮は自覚的には感じない。

午後2時にまた内診があり、7cm開いていると言われる。思ったより進行が早い。無痛は進行が遅いと言われるが、力みがなくなった分進みが早くなったのか?臀部の痛みは強いものの腹部の張りの実感はなく、胎児が出てきているという感覚もなく、いまいちピンとこない。午後3時に内診され、全開大になったと言われる。あれ、もうすぐなのでは?麻酔が効いてきたのか痛み自体はほとんどなく、周期的に肛門に圧迫感がある程度。足の先に軽いしびれを感じるが不快というほどではない。SNSで夫に進捗を伝えつつ、助産師さんの指示に従って右側臥位になったり、仰臥位に戻ったり、肛門の圧迫感に合わせて息んだりする。途中で「狭いところ通っている心拍ですね。」と言われる。なるほど、胎児心拍が110台まで落ちている。 午後3時40分に「もう産まれます。パパ待ちです。」と言われる。待っていいものなのか。。へそをのぞき込むようにして体をかがめ、陣痛に合わせて息むようにいわれるが、感覚がないためあまり力は入らない。とりあえず頑張って息んでみる。 

53分に夫が到着し、産む体制に入る。夫は助産師さんに指示され、私の頭を持ち上げているがいまいち助けになっているかどうかわからない。医師が「引きましょう」と言い、助産師さんが「え、引くんですか」と言っている。何か医師がごそごそ引き出すような操作をした後、産まれた。(吸引されていたらしい。)

すぐに泣き声が上がり、羊水の吸引などされた後、母子のふれあいということで私の元に新生児が渡される。顔や手など触れてみる。出産報告などきいていると、子どもの顔を見た瞬間かわいさがわき上がってくるというエピソードもあるけれど、実感はわかない。

3492gの男児とのこと。超音波では3,100程度と言われていたのでかなりズレがある。全体的に赤くむくんでいて、顔立ちははっきりわからない。まだ羊水から揚がったばっかりという印象である。

会陰が2cm裂けたとのことで縫合する。麻酔が効いているので痛みはまったく感じない。

基本的に母子同室のポリシーの産院なのだが、出産当日は子どもは預かりになるというポリシーらしく、子どもは引き取られ、わたしは出血が落ち着き麻酔が切れるまでの3時間モニタがつけられて監視されることとなる。麦角アルカロイドを投与されつつ時間が過ぎるのを待つ。そういや出産による死亡で一番件数が多いのは出産後の大量出血だったっけっと考える。出産前に周産期の妊産婦死亡に関する文書を読み過ぎてメンタルに悪い。出産関連のネットの情報は怪しいものが多く、産婦人科ガイドラインや医師によるドキュメントを好んで読んでいたのだが、そうするとどうしても異常分娩や妊産婦の死亡例の話が多くなってしまう。実際に死や重大な後遺症が残るようなケースはほとんどないのだろうし、分娩数が全国でも飛び抜けて多い産院なのでたいていのイレギュラーは滞りなく処置してくれるのだろうが。

モニタはつけているけれど、基本的には病院スタッフはそばにいないので、夫に付き添っていてもらう。具合が悪くなったとき、自分でナースコールを押すことができる、または押すという判断ができる(迷惑かなと想ってしまうかもしれない)という保証はない。飲水を推奨されているが、動くと出血が進んでしまうし、モニタをつけられているのでポカリスエットを買ってきてもらう。一仕事やり終えた高揚感で出産とは関係ない話をして待つ。

事前に想像していたほどくたくたではないが、一日中水泳をしていたような倦怠感と強く尻餅をついたような臀部の痛みがある。

途中で出血が基準量を超えたとのことで観察時間が一時間延びたと言われる。あとで聞くと、出血量は892mlだったとのこと。鉄分のサプリメントを飲んでおいてよかった。

産後4時間で観察が終わり、歩けることを確認して新生児との記念写真をとる。子どもを渡されて抱っこするが、産後の消耗のためきちんと抱けるかどうか不安が強く、かわいいとかいう感情がわいてくるどころではない。WHOは母乳育児を成功させるため出産直後からのカンガルーケアを推奨していると聞くが、やはり出産直後はきついような気がする。

産後用の部屋に案内され、明日から思うように眠れない日が続くのだからと、また眠剤をもらって眠った。